『The story of……』
気がつけば立ち上がって、カスカスな音の応援歌をグラウンドに向けて吹いていた。


どうしてかはわからないけど……こうしなきゃいけないって思った。


多分……苦しそうに走る五木くんの足を、無理矢理でも止めたかったんだ……。



構えていたトランペットを下ろすと、怪訝そうにわたしを見上げる五木くんと目が合った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「……なんであんなところで練習してたの?」


「…………」



近くのファーストフード店で、向かい合った五木くんに尋ねてみる。
五木くんはわたしに目もくれず、ハンバーガーを頬張り続けてる。



「今日部活あるよね? ねぇ、なんで?」


「…………」


「ねぇー」


「答えたくないから黙ってるってわかんねぇのかよっ」



かじりかけのハンバーガーを置いた五木くんが、わたしを睨みつけた。

おずおずと口を噤んだわたしを無視して、オレンジジュースを飲んだ五木くんは、


「……おまえ、スポーツとかやってたクチか?」


「ううん。だって吹奏楽部だったし」



ゆっくりとオレンジジュースを置き、わたしから視線を外した。


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