『The story of……』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


翌日。
日曜日の朝から、


「すぐに駅まで来いっ」


という、まくし立てるような電話で、わたしは慌てて身支度を整えた。



「おはよう、五木くん」



小走りに向かった駅に居たのは、私服姿の五木くん。

切れた息を整えるわたしに構わず、


「行くぞ」

「えっ、ちょっと」


予め買ってあった切符を差し出し、改札へと向かっていく。



「どこ行くの?」



電車の中でいくら尋ねても、五木くんはだんまり。



(行き先くらい言ってくれてもいいのに……)



そのまま三十分程、電車に揺られてやってきたのは、小じんまりとした神社だった。



「ここの神様、スランプに効くらしい」


「そんなのあるんだっ」



五木くんに促されて、わたしたちは境内に並んで立つ。


「噂でも迷信でも、藁にも縋りたいのはお互い様だろ」



こう言ってはにかんだ五木くんに笑い返し、わたしたちは手を合わせた。



(どうか……わたしと五木くんのスランプが治りますように……)



そのままお守りを一つずつ買って、わたしたちは神社を後にした。
< 95 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop