『The story of……』
「簡単簡単っ」
わたしをからかうように辰琉は笑い、トランペットを受け取る。
トランペットを手にし、見よう見まねで構えた辰琉の手が急に止まった。
「どうしたの?」
威勢良くトランペットを受け取った辰琉の表情が、何故か頬を赤らめてこちらを向く。
「いや、だって……これに口つけたら」
(あっ、なるほど……)
「汚いよねぇ。待って、タオル……」
持っていたタオル片手に、辰琉の手にあったトランペットに手を伸ばせば、
「汚くねぇよっ」
「何言って……っ!」
タオルを持っていた手を辰琉に掴まれ、そのまま勢い良く唇が触れた。
「……汚いわけねぇよ。何回だって……したいぐらいだっ」
「辰琉……」
見たこと無いくらい間近にある辰琉の顔。
赤くなった頬に、表情は真剣だった。
「好きだ、愛都っ」
その瞳に映るわたしは……、
「わたしも、好きっ」
にっとはにかんだ後、その胸の中へと飛び込んだ。
スランプだってはねのけちゃうわたしたちの絆。
これからもっと、大切に育んで行こうね?
-辰琉編END-