5人の王子とお姫様!
守らないといけない女の子
人の間をすり抜けて、ひたすら走った。
自分を知っている人のいない、どこか遠い所に行きたくて、仕方がなくて。
無理な事だと分かっているはずなのに……。
そうして、人気のない海岸沿いの階段に体力の限界でへたり込んだ。
何度も、何度も。
遠くもない過去の出来事が鮮明に頭の中を駆け巡る。
『あんたってつまんない』
『ちょっと金持ちだからって良い気になんないでよ』
『もう学校来んな』
『お前に生きる意味なんてあんの?』
心ない言葉の数々に、ただ、胸が苦しい。
『なあ、柳瀬。
……死んでくんない?』
深く、胸に突き刺さって襲いかかる。
残酷な言葉だって言われ慣れた。
それでも、癒えない傷は広がっていくばかりで。
“もうやめて”
どんなに懇願しても止まない苦痛。
止まってくれない罵声。
愉悦に歪んだその顔は、悪魔の笑みにすら見えた。