5人の王子とお姫様!
そんなことを思ったけど……
同時に、チャンスだとも思った。
また喧嘩が再開しそうなピリピリした空気。
全員の注意がそれぞれに向いている今のうちに。
……よし、逃げよう。
そう思い立って、今度こそ逃げ出すつもりで壁に背をつけてそっと切り抜ける。
ドアは開いていたけど、これでよく周囲にこの喧騒がバレなかったなと今更ながらに思った。
けど、校舎の端の端に面したここは、幸いにも授業を受ける他の教室とは離れているらしく、その心配もなかったよう。
ホッと安堵の息を漏らして見事脱出を遂げた。
……と、思ったら。
「……え、な……っん…」
後ろから口を塞がれて、声を出せなくなる。
突然の出来事に戸惑って、抵抗もできなかった。
訳が分からない。
そうして、相手が誰かも分からないまま人知れず、今度こそ本当に拉致されてしまった。