秘密の恋~絶対に知られちゃいけない恋だったのに~

開明商事《かいめいしょうじ》海外事業部1課 営業 瀧佑介《たきゆうすけ》。29歳。
それが、俺の肩書。

昔から顔もスポーツも勉強もまぁまぁ一流の部類だった俺は、特に苦労もなく一流商社である開明商事へ入社した。
入社後も特に苦労もなく営業成績トップを常にキープし、部長の覚えもよく、数年後には出世街道に乗ること間違いなし・・だ。


「瀧!」

海外事業部へ入り、自分のデスクに座ってPCの電源を入れるなり、朝倉部長から声がかかった。

「はい!」

俺はササッと朝倉部長のデスクの前へ行く。
パリッとスーツを着こなした朝倉部長は昨夜はデレデレして女の膝の上で膝枕していた50過ぎのおっさんとは思えない。

「昨日はご苦労さん。お前来週月曜日からシンガポール飛んでくれ。キャメルホールディングスで問題が起きた。お前の力が必要だ。」

「はい。わかりました。それで問題とは?」

「先方の専務が工事の進行のことで怒っててな・・・工事の請負会社は話が違うと言っているし・・・両方の顔が立つようになんとかやってきてくれ。瀧ならできるだろ。」

「そうですか。まぁ大丈夫でしょ。なんとかしてきます。」

こういうところは人を乗せるのがうまい。お前ならやれるといわれて、嫌ですというやつはいない。

「頼むぞ。ところで・・・」

「はい。」

「お前、昨日、メイちゃんと消えただろ?」

突然小さな声になった部長はニタニタと笑いながら耳打ちした。

「まぁ・・・」

「ははは。また来週も付き合えよ。いい店だろ?『アモーレ』。」

「まぁ・・・部長はミカちゃんと・・・」

「シーッ。ここでは禁句だ。」

朝倉部長は口の前に指を立てると、そのまま席に戻るよう促した。


ふん!このエロおやじが。


昨日はお目当てのミカちゃんがいるとかでキャバクラにつき合わされた。
だいたい俺はキャバクラとかの玄人女は興味がない。いつも素人のしかも清楚綺麗系限定だったはずなのに・・・

なぜだか昨日はその玄人女と寝る羽目になってしまった。
くそっ!

しかもお金置いて帰るとか!俺をなめてやがる。あの女・・・
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