これがキスだと知らなかった。
勇兄はお母さんとは仲がいい。
仲がいいってゆうか、勇兄は大人だから
気難しいお母さんの扱いが上手い。
お母さんと勇兄の大学の話で盛り上がってる中、
無口な晴兄の隣で黙々とおかずに手を伸ばす。
「仁菜、また怒られちゃったね」
「う、うん..」
私が気まずそうにしてたのを察したのか、
晴兄が優しく笑った
「仁菜、こっち」
そう2人に聞こえない程度の小さな声で言った後、
晴兄は私の顔を見て顔を少し突き出した。
いつものおまじないの合図だった。
私達2人にしかわからない。
誰も知らない、おまじない。
お母さんと勇兄が話に夢中になってる中、
私達の距離は近くなる。
これをする度にいつも心臓の鼓動が速くなる。
キュッと胸が締め付けられる。
一瞬の出来事。
私は目を瞑り、晴兄と唇を合わせた。
たった一瞬の出来事なのにスローモーションであるかのようだった。