これがキスだと知らなかった。




夕食を終えていつも当番で片付けをしている私達。

今日は勇兄が当番だった。


リビングが見えるアイランドキッチンから見える勇兄は
背が高くて頭もよくてスポーツもできる。

どうしてこうも兄妹で差ができるのかな..


「はぁ..」


ついリビングのソファに座りながらため息をついた。


「仁菜、母さん風呂から上がったら晴周かどっちか先に入っていいから入れよー」

「あ、うん!
私も洗い物手伝おっか!」


どうにもならないことを考えてても仕方ない!

お母さんだって私が高校に入ったばっかりなんだし
ちょっと点数悪くても許してくれるよね


キッチンの洗い場に立つ勇兄の隣に立つ。

やっぱり勇兄は身長高いなー。


「いいよ仁菜、もうすぐ母さんも出てくると思うし
鉢合わせたくなかったら部屋にいっとけよ」

「え?あー、うん、そうだね」

「元気出せよ。俺からも言っとくしさ、
可愛い顔が台無しだろ?」


ニコッと笑った勇兄。


「げ、元気だよおー、ありがとね、勇兄」



さっきの夕食のときに叱られてから
なんやかんやで私、勇兄にまで気使わせちゃったかな。


結局洗い物を手伝うのを断念、部屋に戻る為に
リビングから出ようとドアを開けたときだった。




「あっ....」


タイミングが...

そこにはバスローブを着てスタスタとリビングに
入ってくるお母さんとまさかの鉢合わせ。


最悪だ


「あら仁菜、忘れない内に聞いとくわ。
テストの点数、どうだったの?」


もう逃げられない...


「あ、うん、そうだね。ちょっと待って..」



リビングのソファに置きっ放しだったスクールバッグから
、例の最悪点数の答案用紙を引っ張り出した。



耐えろ自分!
期末は頑張ればいい..!


「あ、はい、これ..」



その白い紙には大きく18と殴り書きのように
書いてある丸が明らかに少ないものだった。


「あんたねー...勇拓や晴周を見習いなさいよ」


母の刺々しい目線だった。


「ご、ごめんなさい。
期末はいい点取れるように頑張るね...!」


「頑張る頑張るって、
そう言えばいいと思ってるんでしょ?」


私の中でのお母さんはとても怖い人。
緊張感が走って嫌な汗が流れた。


洗い物の水道から水が勢いよく出る音
テレビから流れるバラエティ番組さえも騒音に聞こえた。



「ごめんなさい..」


鋭い視線から逃れようと下を向くことしか出来ない。
















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