これがキスだと知らなかった。
晴周side...
母親に泣かされた仁菜は気がつくと
ぐっすりと俺の腕の中で眠っていた。
涙で濡れた長いまつ毛、
余程泣いたんだろう。
安心しきって無防備に男の腕の中で眠っている仁菜を見ると、いつか俺から離れてしまうんじゃないかと不安になった。
スッポリと、抱き締めても腕が余ってしまうコンパクトな身体は壊したくなる程に愛おしい。
細く長い黒髪が映える白い肌は仁菜の純粋な心を映しているようだった。
仁菜の全部は俺の全部。
自分でも馬鹿だって、なにやってんだろって
兄妹がこんな事ありえないって思う事は沢山あった。
でもここまできたら
もうそんなことだってどうでもよくなって、
伝えられない気持ちは膨らむばかり
仁菜がどうしようもなく好きで愛おしくて
誰にも渡したくない。
独占欲と執着心の塊
こんな自分と正反対に、純粋に生きている仁菜に、
嫌われるのが怖くて、いつも仁菜に近寄ってくる
悪い虫は全員フェードアウトさせてきた。
もうなんだっていい、仁菜が俺の全部だから。