命が別れるそのときまで
「そろそろ帰るか?」
「……もう少しだけ」
なんなら先に帰っていて、という声は耳に届いていないことにした。
彼女の横顔は儚い。恋人を亡くしてから急激に細くなってしまった身体は、年を追うごとに僅かに肉付いてくれたけどまだまだ折れてしまいそうで、ここ半年の間、また下降の一途を辿っている。
もう少しここに居たいとごねる理由に、それはきっと通じてるんだろう。
三回忌を過ぎた頃から、彼女は周囲の人間から、もう先に進めと言われている。すなわち、親友のことはもう忘れろということだ。
ついには先日、彼女は両親に泣かれてしまったらしい。
そんなことを彼女の両親から相談されても俺にどうしろというんだ。
親友の代わりになれとでも?
なれるわけがない。
それに、もうとっくの昔に振られている。
そんなこと……彼女に関することなら、もうずっと考えていると、少しだけ毒づいた。