命が別れるそのときまで
親友の墓の前、ようやく腰を上げた彼女の手をとる。身構え力の入った細い手首を逃がさないように更に捕まえると、怯えたような彼女の顔がそこにはあった。
「――好きだよ」
「っ」
「俺をもう少し、おまえの心の近いところに居させてくれ」
「ここでそんなこと言わないでっ」
首を横に振り、俺はそうして親友の墓を見つめる。
「もう一度伝えるなら、今度はこいつの前だと思った」
五年前、想いを終わらせるため、彼女に気持ちを告げた。親友がプロポーズをすると知った日、親友がそれを実行する少し前のこと。
わがままな行動だった。振られて想いを断ち切るために、彼女を利用したのだ。
実るものだとは僅かでも思っていなかった告白に、彼女は頭まで下げてくれた。
ありがとう、嬉しい、ごめんなさい、と。