命が別れるそのときまで
「……私だって、いつまでもこんなんじゃいけないって思ってる」
彼女はいつからか、親友以外と歩むかもしれない未来の可能性を、否定はしなくなった。
悲しみなんて少しずつ、昇華されてしまう部分もあるんだと、笑顔だった瞬間の自分に気づき、あとで涙しながら。
そんな場面を、俺は幾度も幾度も傍で見てきた。
「ああ。解ってる」
知らない男と一緒に歩く彼女を見かけたこともある。親友と似た男、全く共通点の見当たらない男、普通の優しそうな男。
けど、一日と保たないこともあった。
そしてその中に、俺は決して入らない。意識してなのかそうじゃないのか――それは、前者に決まっているだろう。
……除外されるのは自然なことだとも理解しながら、彼女の隣、昔と変わらない立場で寄り添ってきた。
あの日断ち切れたはずの想いは、親友の死という、もしかしたらありふれているかもしれない特異な出来事により、心の中に残留した。
彼女も、俺に対してそうなのかもしれない。嬉しいと俺に言ってしまったことを、悔いていたりもするんだろう。