命が別れるそのときまで
「私……っ」
「誰でもよくて、誰でも駄目なら、俺にしてくれ」
「……まだ……ひとつも、思い出にもなってくれないの……」
「解ってる。忘れる気も、ないってことも」
「……」
「全てに耐えられるのは、俺くらいだ」
「だから一番いけないのよっ」
「俺はそんなに駄目で嫌われていた?」
「ちが……っ」
「忘れたくないなら、俺が適任だよ。忘れられない消えてくれない失くしたくないなんて、こっちだって葛藤し過ぎで身にしみて痛くて堪んねえよ。否定なんて、しない。進もうと足掻いてるんだ。そのスピードに背中を押すことはあっても転んでしまうくらいに急かしたりはしない――だから、どうか俺だけを除外するのはやめてくれ。これまでずっと傍に居たんだ。心も、もっと、もう少し、そうさせてくれ。手放さないでくれ」