俺様彼氏と不器用なクリスマス
『お前は俺が好きだろ?だから、俺の女になれ』
そんな彼の強引な告白から始まった恋人関係。
相手は高校、大学、就職先まで同じという腐れ縁の瀬戸翔平(せとしょうへい)だ。俺様で自分勝手で強引な性格のせいで、よくモテるくせによくフラれる男だ。
そんな彼に片想いを抱き続け、ようやくその恋が叶ったのが2ヶ月前。今、季節は12月中旬だ。
資料室から取ってきた文献を返そうと立ち上がりざま、チラリと翔平を見やった。彼はそんなあたしに見向きもせず、眉間にシワを寄せて、パソコンと向き合っている。
翔平は歴代元カノ達にかなり不評だということは知っている。あたしが友人でいた頃だって、彼の自分勝手な言動を見てきた。元カノはついていけなかったらしいけれど、あたしは大丈夫だって何処かでたかを括っていた。
でもやっぱり、翔平は翔平だった。
連絡はいつも、あたしから。これはある意味、想定内。奴は根っからの理系男子だ。無駄な行動はせず、効率を最重視。必要ない連絡は皆無なのだ。
デートのお誘いはもちろんあたし。しかし、最近はそれすらしていない。
〈映画行きたい〉
〈それぐらい1人でも行けるだろ?子供じゃあるまいし〉
そのまま結局、1人で見に行ったんだっけ。
〈美味しそうなお店見つけたんだけど〉
〈そっか〉
〈今度、仕事帰り行こうよ〉
〈まぁ、仕事落ち着いたらな〉
この話はそのまま流されてしまった。
〈会いたい〉
〈いつも仕事場で会ってんじゃん〉
そんな言葉が欲しいんじゃない。
職場で上司と部下として会うのと、恋人として会うのは違う。
一度そう伝えたら「何がどう違うんだ?」と心底、不思議そうな顔をされた。
彼とのそんなやりとりに疲れてしまって、最近は誘いすらしていない。