セキヨウに想う
この街よりもずっと都会で、夢を追いかける環境の整った場所からの連絡は、距離を感じさせないほどに。
「あ、こんばんは!あのねあのね、今日の稽古はね....」
彼女からの毎日の電話は、充実している彼女の日記のように今も胸に残る。
もちろん泣きたいほど悔しい日もあったようだ。
でも、持ち前の明るさで、それを跳ねのけるように頑張っていた。
「、だよ!セリフが貰えないのは残念だけど……役貰えたんだから!」
「ん。そうだね。そうだよね!やっと立てるんだもんね!」
「そうそう!この前送った写真!綺麗な赤い夕陽のパネルは舞台の……」
楽しそうに話す彼女を電話越しに、僕も嬉しく素直に答えていた。
こんなに頑張ってる彼女が報われなかったら、神様に怒鳴ってやろうかと思っていたが、神様は見守ってくれていたようだった。
中学を旅立ち、それから2年は過ぎた頃の話。
最初に役を貰った時の話も、やはり忘れられはしない、夢が叶う事は僕の夢でもあったから。
自分がしたい自分の夢はその時なんだったのか?そんな事は野暮な話だ。