カゼカオル
「薫は偉い。偉いよ。
俺は気づかなかった。
薫がこんな辛い目にあっていたなんて。
よく頑張ったね。尊敬するよ。」

「好きなんだ。薫のことが。」

そっと頭において手を下ろした。

「でも、もう昔の私なんて
どこにもいないんだよ。
河上くんの好きなあの頃の私なんかどこにも。」

「何も変わってなんかいないよ。薫は。
昔から何一つ変わっていない。
たとえ昔の思い出なんか覚えてなくっても
それでもいい。好きなんだ。」

「ごめん。私には隼也がいるんだ。
河上くんの気持ちはすごく嬉しい。
でも今は応えられない。」

そうだ、今彼女には大山がいるんだ。

あのときの出来事を言いたくなるが、
それだけは自分のプライドが許せなかった。

「そっか。いいんだ。
薫に気持ちを伝えたくて。
ごめんね。困るよねいきなり。」
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