カゼカオル
僕は比野さんと
映画を観に行くことになった。

今一番怖いと噂されるホラー映画だ。

待ち合わせ時間より早く着いた。
遠くで僕のことを探している。

「こっちだよ!風太くん。」

僕を見つけると可愛らしく走ってくる。

「ごめん比野さん、待たせちゃったね。」

「ねぇ、いつになったら名前で
呼んでくれるの?」

「ごめん、彩芽。慣れなくって。」

「少しずつでいいから。」

本当に比野さんは優しい。

怖くなるくらいに優しい。

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