金木犀
きっと二人にとったらはじめてのバレンタインで。
今の私のようにお姉ちゃんも頑張ってチョコ作ってた。
「やっぱり、帰るね。」
そうだ、今日は結婚して初めてのバレンタイン。
お姉ちゃんの「初めて」は全部私がぶち壊したんだ。
だから、今日はワガママ言わず帰ろう。
ソファーに置いたかばんを取る。
「え?もうすぐトヨ帰ってくるよ?」
「うん、明日小テストあるの思い出して、帰って勉強しなきゃ。」
「ご飯、もう出来てるよ?食べて帰ればいいのに。」
「ん、いいの。帰るよ。」
玄関までの廊下を歩きながらお姉ちゃんと会話。
平日遊びに来るとトヨくんが必ず送ってくれる。
せっかくのバレンタインの夜、邪魔することになっちゃうよ。
それはダメ。
もう、7時で外は暗いけど。
ここから家まで走って10分。
私が寂しくなったらすぐ来れるように、近くで家を探してくれた。
もう、これ以上、二人の邪魔しちゃいけない。
その時、ガチャって玄関のドアが開いた。
「ただいまーって、奈々どうしたの?」
入ってきたトヨくんが不思議そうに首をかしげる。
「あ、ちょっと来たんだけど、帰るっ」
そう言ってトヨくんの横を通り抜けると・・・
「あれ?奈々?」
今日、会いたかった、大好きなけいちゃんの声がした。