金木犀



頑張って作ったんだよ!


いっぱいあげなきゃなんないから作るの大変だった!


すっごく美味しいんだから!


会社でもらう義理とは比べ物になんないよ!





いっぱいシュミレーションしたのに。





何も言えない・・・






けいちゃんは私が差し出した紙袋を見て、ぽかんと口を開ける。





「これ、何?」



タバコを持った手で、私の持ってる紙袋を指差す。




「~っ、今日バレンタイン!!」



「・・・・・・・・俺に?」



今度は自分の顔を指差す。



コクンと首を縦に振る





「・・・・・・・・・・ありがと」



小さく言って私の手から紙袋を取る。





「じゃ、じゃぁね」



そう言ってドアに手をかけたとき




「これって、本命?」



「え・・・・・?」





振り返るとけいちゃんは紙袋からチョコの入った箱を取り出してじっと見ていた。





なんでそんなこと聞くの?




ずるいよ。





チョコ渡すだけでもドキドキしてるのに。





義理だって思ってよ。



本当は本命だけど。




気付かないフリしててよ。







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