金木犀
お姉ちゃんの顔を見て、また泣きそうになるのをぐっとこらえて。
「おねっ・・ちゃん!・・・・」
私がしゃべりだすと辺りが静かになった。
「奈々・・・」
「結婚・・・・おめでとう!・・・」
私の言葉と同時にお姉ちゃんに抱きしめられた。
「奈々!・・・ありがとう・・・」
お姉ちゃんはすごくいい香りがして。
ふわってさっきと同じ金木犀みたいに、やさしく香った。
「ごめんっ・・・言うの遅くなったっ・・」
お姉ちゃんは大きく首を横に振り
「いいのっ・・・嬉しいっ・・・奈々におめでとうって言ってもらえて嬉しいっ・・・」
二人して子供みたいに泣いた。
「奈々。」
泣いてる私たちの頭を優しくなでたトヨくん。
「ごめんな、奈緒、取っちゃって・・・」
トヨくんはすごく申し訳なさそうに私に謝る。
「ううん!嬉しいよ?ホントはすっごく嬉しい!だってトヨくんが本当のお兄ちゃんになるんでしょ?」
私の問いかけにトヨくんは泣きそうな顔になって
「そうだな。奈々のお兄ちゃん。ずっとなりたかったから。」
優しく笑ってくれた。