金木犀



お姉ちゃんの顔を見て、また泣きそうになるのをぐっとこらえて。





「おねっ・・ちゃん!・・・・」




私がしゃべりだすと辺りが静かになった。





「奈々・・・」




「結婚・・・・おめでとう!・・・」




私の言葉と同時にお姉ちゃんに抱きしめられた。





「奈々!・・・ありがとう・・・」





お姉ちゃんはすごくいい香りがして。




ふわってさっきと同じ金木犀みたいに、やさしく香った。





「ごめんっ・・・言うの遅くなったっ・・」



お姉ちゃんは大きく首を横に振り



「いいのっ・・・嬉しいっ・・・奈々におめでとうって言ってもらえて嬉しいっ・・・」



二人して子供みたいに泣いた。





「奈々。」




泣いてる私たちの頭を優しくなでたトヨくん。




「ごめんな、奈緒、取っちゃって・・・」





トヨくんはすごく申し訳なさそうに私に謝る。




「ううん!嬉しいよ?ホントはすっごく嬉しい!だってトヨくんが本当のお兄ちゃんになるんでしょ?」



私の問いかけにトヨくんは泣きそうな顔になって




「そうだな。奈々のお兄ちゃん。ずっとなりたかったから。」



優しく笑ってくれた。



< 4 / 51 >

この作品をシェア

pagetop