金木犀
「大人になったねー。」
ソファーに腰掛けてたおねーちゃんが、私の横に座り腕を組んできた。
「奈々も素直に言った?さみしいって」
小さく首を横に振る。
「きっとね、奈々がさみしいって言わないことを寂しがってると思うよ。」
「え・・・?」
「男の人ってそーゆーもん。困るけど嬉しいんだって。」
家に帰って、寝る前にケータイを眺める。
「さみしい」って言っていいかな?
けいちゃんも、私が「さみしい」って言わないことに寂しがってくれてるかな?
すぐに出てくるけいちゃんの番号。
ゆっくり発信ボタンを押してみた。
長い、長い、発信音。
仕事中?もうすぐ12時だよ?
帰り道かな?
けいちゃんの家はあの会社のビルから自転車で5分。
たまに、早く帰れる日は自転車で家に戻ったあと、車でトヨくんを迎えに行ったりしてるって言ってた。