触れられないけど、いいですか?
迷い
後日。
日曜日の午後、私は翔君の家にお邪魔していた。
「さくらちゃんは、和装とドレス、どちらで挙式したい?」
リビングのソファに向かい合って座りながら、翔君のお母様が笑顔で尋ねてくる。
「どちらも素敵だと思いますが、ドレスに憧れます」
「あら、そうなのね! さくらちゃんは和のイメージがあるから和装って言うかと思ったわ! でも、ドレスも絶対にとっても素敵よ!」
翔君のお母様は、あのお見合いで初めて会った日と同様、とても優しく朗らかで、そして美しい方だ。
肌は白く、翔君と同じ二重で大きな瞳。
翔君はお母様似なんだなと思う。
「さくらちゃんがドレスなら、翔は当然タキシードよね! 何色がいい? 白? 黒? グレー?」
翔君のお母様が、今度は私の隣に座る彼に質問する。笑顔を絶やさず、先程からずっと楽しそうだ。
「母さん。それは今決めることじゃないだろ?」
「あら、希望を聞いただけじゃない」
「先走るなよって言ってるんだよ」
まったく、と言いながら息を吐き出す翔君だけれど、口元には笑みが浮かんでいる。翔君も、私との結婚式を楽しみにしてくれているのかな。そうだったら嬉しいな。