触れられないけど、いいですか?
家を出た後は、翔君の運転する車に乗り、とりあえず目的地はしっかりとは決めず、街の方へと向かう。
その車中、私は彼に謝った。
「さっきはごめん。助けてもらっちゃって」
その言葉を聞いた彼は、特に何も気にする様子はなく「いいんだよ。気にしないで」と明るく返してくれる。
そんな翔君の様子に安心するのと同時に……〝罪悪感〟が押し寄せ、胸にチクンと突き刺さる。
「助けてもらったこともそうだけど……お父様に対してあんなに失礼なことをしてしまって、本当にごめんなさい」
「え? 父さんは何も気付いてなかったよ。大丈夫大丈夫」
「そうじゃない。翔君に対してだよ。自分のお父さんを目の前で拒否されてるの見て、嫌な気分にならなかった?」
私がそう聞くと彼は、「拒否って」と答え、おかしそうに笑ってみせる。
そして。
「さくらは、いつも周りのことを考え過ぎだ。周りのことなんて気にせず、もっと自分のことを中心に考えなよ」
「でも……」
「さくらがもっと甘えてきてくれたら、俺も嬉しい」
甘く優しい笑顔でそんなことを言ってくるものだから、その言い方はズルい、なんて思いながらも私は、
「分かった」
と答えるのだった。