触れられないけど、いいですか?
〝さくら〟と。私の名前を呼ぶ彼の声が聞こえてくる気がした。
その位、彼が私の名前を呼ぶ声が好きだった。
声も、笑顔も、優しさも、何もかもーー好きだった。


だからーー



「ごめんっ、お父さん……」



父と母の望みに応えられなくても、私はーー




「私はっ、霜月さんとは結婚したくない……っ。

私はっ、


翔君と結婚したい……っ!」
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