触れられないけど、いいですか?
泣きながら、祈るように訴えた。
こんなことは、初めてかもしれない。父と母に、こんな風に自分の願いを強く主張するのは。
子供の頃から、我儘を言うのは苦手だった。
だけど、悲痛な感情を抱くこと自体が、初めてなのかもしれない。


こんなにも強く、何かを欲しいと願ったことはきっと今まで一度もなかった。


他には何もいらない。


だけど翔君だけは。



翔君だけはーー。
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