触れられないけど、いいですか?
「父さんは、俺が説得する」

夜景を見つめる翔くんが、そう言う。
彼が見ているのは、もしかしたら夜景じゃないかもしれない。その先にある未来とか、そういうものを見ているのかもしれないと感じた。


「霜月グループがどうとかも関係ない。俺はさくらと結婚したい。それだけだ。
大丈夫、父さんだってきっと分かってくれる」


私はいつも、翔君に励まされてきた。
彼の言葉は、いつだって温かくて、そして説得力があって。


翔君がそう言うなら、きっとなんとかなるのかなって。お義父さんも理解してくれるのかなって。そう思う。


「翔君……」


……だけど。



「あのね、私も話がある」



翔君のことが好き。言葉に出来ない位に好き。



だからーー。




「私達、このままお別れした方がいいと思う……」



だから、さよならしよう。
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