触れられないけど、いいですか?
涙が出そうになって、でもそれを見られたくなくて、私は彼に背中を向ける。


そのまま振り返らず、歩き出す。


歩くスピードが、だんだん早くなる。
彼から逃げるように歩いていく。



本当は、逃げたくない。
一緒にいたい。


だからこそ、振り返らずに歩かなければいけない。



「う……っ」


泣いたら駄目だ。我慢しなきゃ。


もう、翔君と会うことは二度とないーー


そう思った、その時だった。
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