触れられないけど、いいですか?
背後から、温かい何かに抱き締められた。
振り向かなくても分かる。
翔君だ。
「翔君……?」
彼の名前を呼ぶと、私を抱き締める腕にギュッと力がこもる。
そして。
「……分かってる」
「え?」
「さくらと結婚したら、失う物はたくさんある。周りを不幸にするかもしれない。
俺だって、自分のことだけが大事な訳じゃない。家族も、家も、自分のことより大事に思ってる。
……それでも。
何よりも一番大事なのはさくらなんだ。さくらを失うことだけは考えられない。
他の何かを犠牲にしても、さくらと一緒に生きていくことは諦められない。だからーー
俺と結婚しよう」