触れられないけど、いいですか?
休日の昼間というだけあり、車内はそれなりに混んでいる。
とは言えぎゅうぎゅうの満員電車ではない。
私の電車内の記憶は、痴漢に遭ったあの日の満員電車の記憶で止まっているから、この車内はそこまで混んでいるようには感じなかった。
でもシートに空きはなく、立っている必要がある為、吊り革に掴まりながら、揺られる。
……あの日と同じ光景だ。
大丈夫、大丈夫……。痴漢になんてそうそう遭わない。
今日はスカートを避けてパンツスタイルだし、絶対に大丈夫……。
必死に自分にそう言い聞かせるも、意識すればする程、怖くなってきてしまう。
隣に立っているおじさんが、急にお尻を触ってきたどうしよう。後ろにいるおじさんが、電車に揺られたフリをして身体を触ってきたらどうしよう。
きっとそんなことはないと思うのに、悪いことばかり考えてしまい……私は吐き気がし、その場にうずくまってしまった。
「君、大丈夫かい?」
頭上から聞こえてくるのは、恐らく隣に立っていたおじさん。
心配してくれているのに、〝話し掛けないで〟、〝触らないで〟と思ってしまう……。
触れられるのが怖くて、更に身を縮こませる。
その時。
「あの、しっかりしてください」
おじさんとは違う声が左から聞こえてきて、反射的に顔を上げれば、そこには瞳の大きな女の子がいた。
とは言えぎゅうぎゅうの満員電車ではない。
私の電車内の記憶は、痴漢に遭ったあの日の満員電車の記憶で止まっているから、この車内はそこまで混んでいるようには感じなかった。
でもシートに空きはなく、立っている必要がある為、吊り革に掴まりながら、揺られる。
……あの日と同じ光景だ。
大丈夫、大丈夫……。痴漢になんてそうそう遭わない。
今日はスカートを避けてパンツスタイルだし、絶対に大丈夫……。
必死に自分にそう言い聞かせるも、意識すればする程、怖くなってきてしまう。
隣に立っているおじさんが、急にお尻を触ってきたどうしよう。後ろにいるおじさんが、電車に揺られたフリをして身体を触ってきたらどうしよう。
きっとそんなことはないと思うのに、悪いことばかり考えてしまい……私は吐き気がし、その場にうずくまってしまった。
「君、大丈夫かい?」
頭上から聞こえてくるのは、恐らく隣に立っていたおじさん。
心配してくれているのに、〝話し掛けないで〟、〝触らないで〟と思ってしまう……。
触れられるのが怖くて、更に身を縮こませる。
その時。
「あの、しっかりしてください」
おじさんとは違う声が左から聞こえてきて、反射的に顔を上げれば、そこには瞳の大きな女の子がいた。