触れられないけど、いいですか?
「うん。大丈夫」

「なら良かった。当日は俺が車で家まで迎えに行くから。
だけど、ごめんね。一生に一度の大事な結婚式なのに、会場はうちの家族が勝手に決めてしまったようなものだから」

「そんな、謝られることなんてないよ。日野川家の皆さんと親交のある方が経営しているホテルで式が出来るなんて、光栄だよ」

「ありがとう。ウェディングドレスは、さくらが一番着たいと思うものを選んでね」


ウェディングドレス……。それを着ている自分を、今までちゃんと想像したことがなかったから、急に気恥ずかしくなる。

だけど……


「さくら? どうかした?」

不自然に黙り込んでしまった私を不審に思ったのか、翔さんが声を掛けてくる。

気恥ずかしかったから思わず無言になってしまった、と素直に伝えようかと思ったけれど、本当に伝えるべきはそこではない気がした。

今、本当に伝えたい言葉は……


「あのね……」


さっき、〝誘ってもらえて嬉しかった〟と素直に伝えられなかった私だけれど、彼のことを好きになり始めているからこそ、やっぱり、自分の気持ちは恥ずかしくても正直に伝えたい。



「結婚式、凄く楽しみ……ですっ」
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