触れられないけど、いいですか?
4.やめた方がいいのかな
「全ての会場をご覧になっていただきましたが、ご希望の会場はお決まりになられましたか? ちなみにこちらの会場ですとご招待様の人数のおすすめがーー」
初めて打ち合わせに来た日から二週間後。
今日は、ホテル内の披露宴会場を全て見学させてもらい、どの会場にするかを決めるという話から始まっている。
ブライダルの担当の方が親切にこと細かく様々な説明をしてくれるけれど、情報が多過ぎて、頭の中がすぐに整理出来ない。
「招待する方達が多いから、こっちの会場はどうかな? でも、こっちの会場は景色が一番綺麗だったよね。さくらは、どうしたい?」
打ち合わせブースにて、隣の席に座る翔君が、私が決めやすいように意見をくれる。
「えっと……私はこっちの会場がいいと思った」
「うん、いいね。俺もそう思う」
そんな私達のやり取りを、担当の方が微笑ましそうに見つめている……。翔君が私をリードしてくれているのが明白で、何だかちょっと、いや結構恥ずかしい。
私も、もっとしっかりしなきゃ。もうすぐ、彼の正式な妻になるのだから。
本日の打ち合わせは、二時間程度で終了した。
ブライダルサロンを後にし、ホテルの廊下を翔君と歩きながら、つい「はあー」と大きく息を吐いてしまった。
そんな私を見て、翔君がクスッと笑う。
「疲れた? これからもっと決めていくこと増えていくけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫! まだ慣れてないから、ちょっと肩に力が入っちゃってただけ!」
「そう? ならいいけど」
そう答えながらも彼はまだおかしそうに笑っている。
うーん、やっぱり彼の方が余裕があるなぁ……。ちょっと悔しい。