学園スパイラル~七不思議編~
「確かに、上手い」

「よく、描けてるね」

 待ちに待って彼女はようやく、美術の授業を終えた。二人は、それに対する頑張りを褒め称えた。

 すると、どこからともなく、そよ風が頬をくすぐった。それは閉め切った部屋であるにも関わらず、どこか春を思わせる新緑の香りをまとっていた。

「ありがとうと言っているよ」

 匠は目を細めて二人に笑みを浮かべる。危ない、女だったら確実に惚れている。

「成仏したんだな」

「そか。良かったね」

「うん。そうだね」

 部屋をあとにする匠は残された真っ白いキャンバスを見やる。

 もし二人にキャンバスの絵が見えていたならば、返って感想を言いづらかったかもしれない。
 それでも、匠は素晴らしい絵だと思った。

 子どもの落書き程度の出来でも、死して尚も完成させたいと願った絵の相手は、彼女の初恋の男子生徒だったのだから。

 健は、その男子に似ていたのだろう。部屋に入ってすぐ、彼女はずっと健から目を離さなかった。

 その想いが詰まった作品は、確かに素晴らしい絵なのだ。




 
< 33 / 68 >

この作品をシェア

pagetop