学園スパイラル~七不思議編~
「弾いてみて」

 匠が優しく求めると、また犬のお巡りさんが部屋に響き、それと同時に肖像画が泣き始めた。

「え? なにこれ。どういうこと?」

 さすがの健も訳がわからなくて視線を泳がせている。

「──ええい! もう止めろ! そのピアノは高価なピアノなんだぞ。それを、よりにもよって犬のお巡りさんだなんて!」

 たまらずに荒らげた耕平の声に、ピアノと鳴き声が止まった。

 匠はそれに、

「うん。そうなんだよ」

「え?」

 聞き返した健を一瞥し、肖像画を見上げる。

「あの肖像画にも霊が取り憑いていて、折角のピアノから奏でられる音楽に嘆いていたんだ」

「なんだよそれ」

 耕平は思いがけない肖像画の真相に怪訝な表情を浮かべた。

「この子は高校に入ってピアノを勉強しようとした。だけど、通学途中で事故に遭いそのまま他界。勉強前に唯一奏でられたのは、犬のお巡りさん」

 説明しながら、匠は鍵盤をそっと撫でた。
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