学園スパイラル~七不思議編~
 この子がピアノに取り憑いたことにより、同じようにピアノに関する霊たちが集まってきたけれど、ピアノを少女に占領されていて仕方なく肖像画に取り憑いた。

「なのに、高価なピアノから流れる音楽は犬のお巡りさんばかり」

 これが嘆かずにいられようか──

「それで、七不思議がここだけ二つあったのか」

 健はなるほどと手を打った。

「君は本当は、何を弾きたかったんだい?」

 匠が静かに問いかけると、たどたどしく鍵盤が弾かれた。そのメロディは──

「アヴェ・マリア」

 人差し指で弾かれたようなメロディに、耕平はつぶやいた。

「そうか。それじゃあ、これから勉強しよう」

 匠は椅子の左半分に腰掛けて鍵盤に両手を乗せる。

「周防。おまえ、弾けるのか」

「匠はピアノ上手いんだよ」

「そうなのか?」

 眉を寄せた耕平に笑みを見せ、誰もいない右側に視線を向けた。
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