学園スパイラル~七不思議編~
匠と首なし幽霊は、言葉を交わすこともなく、しばらく互いに見つめ合う(匠と見合っているのは、もちろん中華鍋の中にある頭だ)。
鍋の中の頭は、三十代くらいの男の頭部だろうか。血の気の無い白い顔が無表情に匠を見つめている。
しかし、匠には恐怖など微塵もないのか、にこりと微笑んだ。
「君、手首の返しが甘いよ」
言われて幽霊は勢いよくホバリングしガスレンジの前で止まると中華鍋を振り始めた。
「大丈夫。出ておいで」
二人に手で促す。
「どういうこと?」
「もしかして、あいつ新人?」
耕平は考察した結論をぶつけてみた。手首の返しが甘いのは、明らかにプロじゃない。
「やっとチャーハンの担当になったのに、海で溺れたみたいだね」
匠の言葉に、二人はゆっくりと首なし幽霊に視線を送った。