俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「下」
「この鏡はその人の真実を映す鏡なんだよ!見てみたい人は舞台に上がってきてね。でもその前に…」

イワンがリリーの肩に手を置く。俺とフローレンスの顔が強張った。

「リリーくんに先に見てもらおうかな!」

「えっ!?私!?」

にこやかに笑うイワンに、かなり戸惑った様子のリリー。普段のリリーなら、「見たい!」と喜んでいるはずだろう。なぜだ?

鏡は後ろを向いているので観客には見えないが、舞台そでから見守っている俺たちには見えるようになっていた。

リリーは青ざめた顔で俺たちのところに走ってきた。

「リリーさん、どうかされましたか?」

小町が心配そうに訊ねる。

観客たちは、リリーが引っ込んでしまったことに戸惑いを隠せていない。素直にざわついている。

「具合でも悪いのかネ?」

リーが真面目な表情で、リリーの手首を掴む。脈を測るためだ。たしかに今、リリーの表情は誰が見ても驚くほど悪い。

「……違うよ、そうじゃない……」

リリーは震えた声で言った。

「……お願い。私の真実を……見ないで……」

リリーの体は小刻みに震え、顔色はますます悪くなる。

「わかりました。見ないようにします!」

ジャックがリリーに安心させるように笑いかけた。

「……リーバス……」

元気のない声で、リリーは俺を呼び、見つめる。俺は心配でたまらなかったが、不安にさせてはならないと笑った。
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