俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「下」
「……リリーに会いたい」

独り言でそう呟くようになったのは、いつ頃からだろうか。

新聞では、クリスタル王女様のことが頻繁に掲載される。クリスタル王女様は、貧しい人々に働く場所や家を与えたり、貴族とともに援助をしたり、王や王妃よりも、民衆から慕われているそうだ。

雲の上の人になってしまったクリスタル王女様のことを、俺は新聞でしか知れない。もう話せないのだから。

「ワン!ワン!」

ベルの鳴き声で、俺はゆっくりと目を開けた。

今日は、警察の仕事も対策本部の仕事もない。昼ご飯を食べ、コーヒーを飲んでいるうちに眠ってしまったようだ。

「ベル、どうした?」

ドアに向かって鳴くベルの頭を俺は撫でる。誰か来たようだ。しかし、警戒をしているようではないようだ。ベルは大きな尻尾を振って喜んでいる。レムだろうか?

コンコンコン、と控えめにドアがノックされる。レムなら勝手に入ってくることがあるので、レムではない。誰だろうか?

俺が不思議に思いながらドアを開けると、そこには、ずっと会いたいと思っていた人がいた。
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