俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「下」
「うん!」

ゆっくりと歩いて旅館の外に出て、観光地へと向かう。

「どこに行くんだ?」

かばんから地図を取り出すリリーに、俺は訊ねる。地図は残念ながら桜花語で書いてあるため、読むことはできない。

「えへへ。小町に色々教えてもらったんだ〜!」

リリーは楽しげに笑った。要は着くまでお楽しみというわけだ。

まあ、こいつに任せるのも悪くはない。俺はリリーに委ねることにした。



旅館の近くにあるレトロな雰囲気の駅に着いた。

「列車で隣町に行くよ〜」

リリーが笑う。

「…わかった」

切符を買い、列車に乗る。制服姿の学生や、仕事へ向かうであろう人々で列車は少し混んでいる。

「列車に乗るの初めて!ドキドキ!」

「こら!大声で言わなくていい!」

大声で恥ずかしいことを言うリリーの口を押さえる。もう少し常識を知ってほしいものだ。

周りにいる乗客が俺たちをジロジロ見ては、クスクスと笑う。何がそんなにおかしいんだ。

しばらくすると、列車がゆっくりと動き始めた。リリーの体が傾く。

「わっ!」

「リリー!」

俺はリリーの体にまた腕を回し、支える。触れた場所が熱い。

それと同時に、桜花人の女性たちが「すごい!王子様みたい!」とささやくのが聞こえた。多くの視線が集まり俺はとても恥ずかしいが、リリーに回した腕を解くことはなぜかできなかった。まるで、リリーに腕が縫い付けられたかのようだ。
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