俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「下」
リリーが俺の服の袖を引っ張った。

「私も会議に遅刻したら、ああいう風に言えば大丈夫?」

「絶対にやめろ!」

俺は即答した。

「井村!また遅刻か!!今月でもう五回目やぞ!何で遅刻したんや!」

太郎さんが井村を叱る。

「あの… 寝坊したとか、そういうのじゃないんです〜。実は、駅前を歩いてたら女性が痴漢に襲われていたんです」

「えっ…それで?」

みんな井村の話に、顔から怒りが消えた。

「やめろって言って、俺は女性を助けたんです。そしたら痴漢が殴ろうとしてきて、俺は痴漢をボコボコにしました!それで、女性がお礼にキスしてくれてあと百万円くれたんですよ!」

「えらい急展開やな」

太郎さんが言う。

「そこで目が覚めたら、こんな時間になってました」

井村の発言に、全員がずっこける。

「お前やっぱり寝坊やないか!」

「すみません〜」

劇は順調に進んでいく、そう思っていた。俺とリリーの笑いは絶えず、次の展開にわくわくし、役者たちの目も輝いている。

そんな中で、俺は異変に気付いた。
< 44 / 211 >

この作品をシェア

pagetop