青い龍の激情
「そうなりますかね。」

途端に、胸のもやッとした感覚が、もっと大きくなった。


今までの人達は、手をつけたのに、私は……

あの日、ユウさんを拒否したのは、間違いだった?

「いや、だからこの前も言ったでしょ。若頭は、知世さんを大事にしてるんですよ。」

「大事に……」

「好きな物は、後まで取っておきたいって、言うでしょ。」


そんな物かと、増田さんに言いくるめられた気がした。

「それで?知世さんは、キッチンに何の御用ですか?」

「ああ。ユウさんに、お弁当を作ってあげたいの。」

「へえ。お弁当。」

そう言えば、夕べ。

”若頭は、夕食を食べない”って言っていたのは、増田さんだった。

「……食べてくれるかしら。ユウさん。」

「さあ、どうですかね。作ってみては、如何ですか?」
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