青い龍の激情
「あっ……」

差し伸べられたその手に迷ったのは、あまりにもその人が、カッコいいからだった。

「さあ。」

迷った挙句、自分の手をその人に預けた。

「ここに座って。」

私は、お店のカウンターの椅子に、座らせられた。


「お嬢さん、お名前は?」

「知世です。」

「ほう。いい名前だ。」

それがお世辞で、私との会話の切り口にしているのは、分かり切った事だった。

「知世さん。私達がここに来た理由を、お話しましょう。」

「はい。」

背筋が伸びる。

「いやね。簡単な話なんです。ここにいるお父さんがね、私共から借金をしまして。」

私は、お店のキッチンに立つ、お父さんを見た。

「なんで、そんな事を……」

「ごめんよ。どうしても、店の経営が回らなくて。」
< 4 / 85 >

この作品をシェア

pagetop