青い龍の激情
そんなある日の事だった。

屋敷に、お客さんが来たと、増田さんが言っていた。

「知世さんは、近寄らないようにって、若頭から言われています。」

「そう……」

ユウさんにそう言われれば、客間には近づかないけれど。


そんな事を思いながら、廊下を歩いていると、屋敷の玄関に、お客様の靴があったのが見えた。

興味本位に覗いてみると、見覚えのある靴。

「えっ……お父さん、お母さん?」

慌てて玄関に滑り込むと、やはり両親の靴だった。

「お父さん、お母さん。この屋敷に来ているの?」


私は急いで、客間に移動した。

戸を少しだけ開けると、両親がユウさんに対して、土下座をしていた。

「借金は、これで全額お返しします。どうか、娘を返して下さい。」
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