暗闇に光が差す日



「…早く行こうよ!!」

放課後になり、僕の友達の神谷 真琴(かみや まこと)が僕に近寄ってくる。

「はいよ」

僕は、真琴の後に続いて教室を出た。僕と真琴は、高校2年生だ。真琴と出会ったのは、1年生の夏頃だった気がする。

真琴と出会ってから、色んなことがあった。

真琴をバカにする友達とケンカして別れたり、部活を変えたり、真琴を連れて家族でカラオケに行ったり、そこで良い曲を見つけたり、僕の溜めていたことを全て1人の先生に吐き出してみたり。

とにかく、そんな日々が楽しかった。

あの時とは逆で、嫌なことも全て忘れられる。そんな気がした。

「ねぇ、優弥」

真琴は、僕の名前を呼んだ。それが、あの時の記憶と重なり、僕はその場に立ち止まりたくなった。

「なに?」と、僕はあの時と同じように首を傾げた。

「優弥の弟、何年生?」

真琴の問いに、とても安心をした自分がいる。

「晴樹は、小学4年生だよ」

「…優弥といくつ離れてるの?」

「7つ」と、僕は即答で答えた。

「…俺は、妹とは2つ離れてる」

「へぇ」と、興味なさげに返した僕は、ためらいがあるが過去を少し話そうと、口を開く。

「ねぇ、真琴…僕が、両親から愛されたのはいつ頃か知ってる?」

「…え?」

真琴は、僕の顔を見ながら固まった。

「…どうしたの?」

「あ、いや…。えっと、生まれた時からじゃないの?」

僕は、静かに首を横に振る。

「まぁ…両親って言っても、父からだけど。僕が父に愛されるようになったのは、小学一年生。僕の弟が生まれてからなんだよ…」

「そ、そうだったんだ」

「…今は家族で食べてるけど、昔は皆食べる時間がバラバラだったんだ」

真琴は、無言で歩き続ける。僕は、話を続けた。

「小さい頃から両親のケンカも絶えなくて…父が怒ると、めっちゃ怖いからさ…幼い頃、良く怒られたし、殴られたりもしたさ…」

僕は、一旦口を閉じて歩き始めた。
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