兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》
「ずっと、こうしてるから……
お前は、安心して眠ってろ」



美衣は返事をする代わりに、俺の手をギュッと握り返してきた。



「おやすみ、美衣……」



「おやすみ、お兄ちゃん」



美衣は眠ってる間に俺がどこかへ行ってしまわないか心配だったのか、両手で俺の手を握って眠ってしまった。



あいつがスヤスヤ寝息をたてているのを確認してから、俺はそっと手を離した。



幼い頃は手をつないだまま、二人で眠っていた。



今の俺には、それができなかった。



安心して眠る美衣の寝顔を見ながら、俺は美衣の兄のままでいたいと思った。



可愛い顔で眠る美衣の髪を、指先でなぞる。



自分の中の許されない想いを断ち切って、俺はベッドを離れた。
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