兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》
「それも、いいわね……」



スーツを着て試着室から出てきた俺を、母親はマジマジと眺めていた。



「なんか要、若い頃のお父さんそっくりになってきたわね。

お父さん、今は頭も薄くて、お腹も出てるけど、若い頃は要みたいにスリムでカッコよかったのよ」



「母さん……それって、俺も年取ると父さんみたいになるって言いたいの?」



「そんなんじゃないわよ……
でも、わかんないかもね」



そう言って、母さんは笑っていた。



今日の母さんは、朝から上機嫌だった。
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