兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》

「美衣が来るまでは、要、一人っ子だったし、
ずいぶんやんちゃだったのよ。

私がやるなって言ったこと、ワザとやってみたり、
本気で注意したら、ふてくされたり……」



「そうだったか……？」



「美衣が来たばかりの頃も、要、お兄ちゃんなのに全然譲ってあげないから、おもちゃとかすぐ取り合いになるし……

美衣のことも、よく泣かせてたし……

でも、いつの間にか、優しいお兄ちゃんになってたわね」



「俺は、そんなにいい兄貴になれてない」



「そんなことないと思うけど……
でも、年頃になると難しいわね」



この前のことを思い出したのか、母親は目を伏せた。



あれ以来、母親とは距離ができてしまったが、今日の母さんなら話を聞いてくれる気がした。



「俺は、いい加減な気持ちで美衣に手を出したんじゃない……

美衣のこと、本気で大切にしたいと思ってる」



「だけど……あなたたちは、兄妹なのよ」



真剣に言った俺に、母親はまっすぐ視線を向けた。