兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》
「それは、わかってる。
でも、俺はあいつのことを妹だと思えなかった。

それに……美衣も知ってるんだよ。
俺たちは、実の兄妹じゃないって……」



「どうして……」



「美衣は、全部覚えてた……
実の両親が、事故で亡くなったことも」



「それ、本当なの……?」



驚いて俺を見上げた母親に、俺は静かにうなずいた。



「そうだったのね……

美衣、何も言わないからパパとママのこと忘れたんだと思ってたけど……

そんなに簡単に、忘れられるわけないわよね」



母は、まだ湯気がたっている湯のみに口をつけた。



「美衣は、手がかからない子だったのよ。

要みたいに口答えしないで、ちゃんと言うこときくし……
私が忙しい時には、自分から手伝ってくれたし。

男の子しか育てたことなかったから、女の子はおとなしいんだと思ってたけど……

もしかしたら、私に気をつかってたのかもしれないわね」
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