兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》
「母さん、その服まだ着られたんだな」



よそいきを着たお父さんが、二階から下りてきた。



「それ、どういう意味……?
若い頃と体型が変わったって言いたいの?」



「いやいや……
昔と変わらず、綺麗だよ」



「そんなこと思ってないでしょ?」



お父さんとお母さんのやりとりが面白くて笑ってしまった。



「お昼用意してないから、これでお兄ちゃんとおいしいものでも食べてらっしゃい。

夕飯までには帰ってくるから」



お母さんはテーブルの上にお札を一枚ポンと置いて、お父さんと腕を組んで行ってしまった。



「いってらっしゃい……」



私は新婚に戻ったような二人を見送ってから、テーブルに置かれた一万円札を拾い上げた。



これ、どうしたらいいんだろ……



この家に、お兄ちゃんと二人きりになってしまった。



私は一万円札を握って、お兄ちゃんの部屋をノックした。
< 214 / 239 >

この作品をシェア

pagetop