兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》
「美衣は、見たいものないの?」



お昼にはまだ少し早くて、私はお兄ちゃんとショッピングモールの中をうろついていた。



「私は、ないよ……
お兄ちゃんは、新生活に必要なものとかないの?」



「そんなの向こう行ってから買えばいいだろ。
荷物になるし」



「そっか……」



あれ以来、お兄ちゃんとは少し気まずくなってしまった。



うつむきながらお兄ちゃんの後ろを歩く私に、お兄ちゃんは振り返った。



「美衣、洋服とかみなくていいの?
何か買ってやるよ」



「今日はいいよ……
この前、たくさん買ったし」



「お前は渋谷でしか買わないのか?」



「そんなんじゃないって……」



私たちの前を、仲良さそうに手をつないだカップルが歩いている。



そのカップルは、ジュエリーショップに吸い込まれていった。



女性は、男性を見上げて何かおねだりしている。



私はなんとなく、その二人を見ていた。
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