音にのせて
第14話 自覚した想い
辻森グループのパーティーも終わった翌日、招待を受けて別荘にやって来ていた凌玖達は帰る準備をしたり、部屋でのんびりしたりと各々の時間を過ごしていた。
「あーあ。もう帰るのかぁ」
そんな中、紫央がベッドへ寝転がりながらつまらなそうに声を上げた。
「香里ちゃんとも久しぶりに会えたし、りっ君とも一緒に遊んだりしたのも久しぶりだし、かなちゃんやまぁ君ともこうやってお泊りした事無かったし。もっとみんなと遊びたかったなぁ~。ねぇ、恭ちゃん?」
紫央は顔だけ上げて、近くで帰る荷物をまとめている恭介へ問いかけた。
恭介の部屋へ紫央がやって来たのはつい数分前。「遊びに来たよー!」と部屋へやって来た紫央は、来るやいなやベッドへとダイブして今に至る。そんな紫央に対して恭介は呆れた溜め息を漏らしつつも、何かを言ったところで素直に聞く奴ではないというのは長年の付き合いから悟り、放置したまま自分は帰る支度をしていた。
「…まぁ、また機会見つけて遊べば良いだろ」
「そうなんだけどさぁ~」
「それより、お前は帰る準備終わったのか?お前いつもこういう時に忘れ物するんだから、ちゃんと確認しろよ?」
「大丈夫!ちゃんと終わったよ」
紫央の力強い言葉に恭介は「本当かよ?」と苦笑を漏らしながら言うと、部屋に備え付けられている小さな冷蔵庫を開けた。
「…ほら、飲むか?」
恭介はペットボトルのお茶を2本手に持って紫央のベッドへ近付くと、1本を紫央へと差し出した。
「わーい!ありがとぉ~」
紫央はペットボトルを受け取るとうつ伏せの状態になり、そのまま器用にペットボトルへ口を付けた。
恭介もベッドの端に腰を下ろすと、ペットボトルのお茶を一口飲んだ。
「…それで?何か用事があったんだろ?」
恭介の言葉に、紫央は一瞬だけ驚いたような表情をしたが、すぐに苦笑に似た笑みを浮かべた。
「…あーあ。どうして分かっちゃうのかな…」
「何年の付き合いだと思ってるんだよ。お前の事なら顔見ただけである程度分かるよ」
「…こういう時、幼馴染って損だよね。隠し事もできないんだから」
「幼馴染の間には隠し事するなって事なんだろ」
「…そうだね」と紫央は小さく答えると、身体を起こした。
「…俺、さ…恭ちゃんに謝らないといけない事があるんだ」
紫央は手に持っているペットボトルに視線を向けたまま、言葉を続けた。
「…昨日ね、俺、りっ君の味方しちゃった」
「は?何の事だ?」
「りっ君とかなちゃんの様子がおかしくて…。喧嘩ってわけではなさそうだったけど、何か2人とも気まずそうにしてて。俺、2人が仲直りできるように手を貸したんだ」
「いや、だから何でそれを俺に謝るんだ?」
話の意図が全く掴めない恭介の様子に、紫央はクスリと小さく笑った。
「…ホント、恭ちゃんも鈍感だよね」
「はぁ?だから何の話を…」
「恭ちゃんは、かなちゃんの事が好きなんでしょ?」
その言葉に、恭介はドクンと鼓動が大きく脈を打ったのを感じた。
「…は?何を…」
「自分では気付いていないかもしれないけれど、恭ちゃん、かなちゃんと話をしている時すっごく優しい顔をするんだよ。分かり易過ぎ」
「バッ…!?そんな事…」
「ない…なんて本当に言える?かなちゃんと一緒にいて、恭ちゃんは何も感じていないの?」
紫央の言葉に、恭介は昨日の事が頭を過ぎった。奏と2人でバルコニーで話をしていた時の事。凌玖が他の人と話をしているのを見ると胸の中がモヤっとするという話を聞かされた時、恭介は自分の心がザワついたのを感じていた。
(…いや、違う…)
よく考えたら昨日だけではない。
いつからだろうか。
気が付いたら、いつも目で奏の事を追っていた。
奏と話していると楽しいと思うようになった。
あいつの笑顔をもっと見たい。
あいつに触れたい。
そんな欲望がいつの間にか心の中を埋めていた。
「…そうか…。これが…」
初めて自覚した感情に恥ずかしくなり、恭介は赤くなった顔を右手で覆うように隠した。
「恭ちゃん本当に鈍すぎ」
「…うるせぇ。だいたい何でお前は分かったんだよ?」
「何年の付き合いだと思ってるの?恭ちゃんの事なら顔見ただけである程度分かるよ」
先程自分が言った言葉をそのまま紫央に返され、恭介は一瞬目を丸くした。
「…そうだな。ホント、幼馴染には隠し事できなくて嫌になるよ」
恭介はそう言いながら小さく笑った。
「…恭ちゃん」
「ん?」
「俺は、恭ちゃんもりっ君も大事だから。俺は2人とも幸せになって欲しいって思ってる。だから、恭ちゃんは恭ちゃんが思うように進めば良いと思うよ。もしそれで辛い事があれば、俺にいつでも寄りかかって良いから」
真っ直ぐと向けられた紫央の瞳。普段はどこか抜けていて危なっかしく思えるのに、時々とても頼りに感じる事がある。
「…ありがとな、紫央」
優しく紡がれた恭介の言葉に、紫央はニコリと笑顔を返した。
「あーあ。もう帰るのかぁ」
そんな中、紫央がベッドへ寝転がりながらつまらなそうに声を上げた。
「香里ちゃんとも久しぶりに会えたし、りっ君とも一緒に遊んだりしたのも久しぶりだし、かなちゃんやまぁ君ともこうやってお泊りした事無かったし。もっとみんなと遊びたかったなぁ~。ねぇ、恭ちゃん?」
紫央は顔だけ上げて、近くで帰る荷物をまとめている恭介へ問いかけた。
恭介の部屋へ紫央がやって来たのはつい数分前。「遊びに来たよー!」と部屋へやって来た紫央は、来るやいなやベッドへとダイブして今に至る。そんな紫央に対して恭介は呆れた溜め息を漏らしつつも、何かを言ったところで素直に聞く奴ではないというのは長年の付き合いから悟り、放置したまま自分は帰る支度をしていた。
「…まぁ、また機会見つけて遊べば良いだろ」
「そうなんだけどさぁ~」
「それより、お前は帰る準備終わったのか?お前いつもこういう時に忘れ物するんだから、ちゃんと確認しろよ?」
「大丈夫!ちゃんと終わったよ」
紫央の力強い言葉に恭介は「本当かよ?」と苦笑を漏らしながら言うと、部屋に備え付けられている小さな冷蔵庫を開けた。
「…ほら、飲むか?」
恭介はペットボトルのお茶を2本手に持って紫央のベッドへ近付くと、1本を紫央へと差し出した。
「わーい!ありがとぉ~」
紫央はペットボトルを受け取るとうつ伏せの状態になり、そのまま器用にペットボトルへ口を付けた。
恭介もベッドの端に腰を下ろすと、ペットボトルのお茶を一口飲んだ。
「…それで?何か用事があったんだろ?」
恭介の言葉に、紫央は一瞬だけ驚いたような表情をしたが、すぐに苦笑に似た笑みを浮かべた。
「…あーあ。どうして分かっちゃうのかな…」
「何年の付き合いだと思ってるんだよ。お前の事なら顔見ただけである程度分かるよ」
「…こういう時、幼馴染って損だよね。隠し事もできないんだから」
「幼馴染の間には隠し事するなって事なんだろ」
「…そうだね」と紫央は小さく答えると、身体を起こした。
「…俺、さ…恭ちゃんに謝らないといけない事があるんだ」
紫央は手に持っているペットボトルに視線を向けたまま、言葉を続けた。
「…昨日ね、俺、りっ君の味方しちゃった」
「は?何の事だ?」
「りっ君とかなちゃんの様子がおかしくて…。喧嘩ってわけではなさそうだったけど、何か2人とも気まずそうにしてて。俺、2人が仲直りできるように手を貸したんだ」
「いや、だから何でそれを俺に謝るんだ?」
話の意図が全く掴めない恭介の様子に、紫央はクスリと小さく笑った。
「…ホント、恭ちゃんも鈍感だよね」
「はぁ?だから何の話を…」
「恭ちゃんは、かなちゃんの事が好きなんでしょ?」
その言葉に、恭介はドクンと鼓動が大きく脈を打ったのを感じた。
「…は?何を…」
「自分では気付いていないかもしれないけれど、恭ちゃん、かなちゃんと話をしている時すっごく優しい顔をするんだよ。分かり易過ぎ」
「バッ…!?そんな事…」
「ない…なんて本当に言える?かなちゃんと一緒にいて、恭ちゃんは何も感じていないの?」
紫央の言葉に、恭介は昨日の事が頭を過ぎった。奏と2人でバルコニーで話をしていた時の事。凌玖が他の人と話をしているのを見ると胸の中がモヤっとするという話を聞かされた時、恭介は自分の心がザワついたのを感じていた。
(…いや、違う…)
よく考えたら昨日だけではない。
いつからだろうか。
気が付いたら、いつも目で奏の事を追っていた。
奏と話していると楽しいと思うようになった。
あいつの笑顔をもっと見たい。
あいつに触れたい。
そんな欲望がいつの間にか心の中を埋めていた。
「…そうか…。これが…」
初めて自覚した感情に恥ずかしくなり、恭介は赤くなった顔を右手で覆うように隠した。
「恭ちゃん本当に鈍すぎ」
「…うるせぇ。だいたい何でお前は分かったんだよ?」
「何年の付き合いだと思ってるの?恭ちゃんの事なら顔見ただけである程度分かるよ」
先程自分が言った言葉をそのまま紫央に返され、恭介は一瞬目を丸くした。
「…そうだな。ホント、幼馴染には隠し事できなくて嫌になるよ」
恭介はそう言いながら小さく笑った。
「…恭ちゃん」
「ん?」
「俺は、恭ちゃんもりっ君も大事だから。俺は2人とも幸せになって欲しいって思ってる。だから、恭ちゃんは恭ちゃんが思うように進めば良いと思うよ。もしそれで辛い事があれば、俺にいつでも寄りかかって良いから」
真っ直ぐと向けられた紫央の瞳。普段はどこか抜けていて危なっかしく思えるのに、時々とても頼りに感じる事がある。
「…ありがとな、紫央」
優しく紡がれた恭介の言葉に、紫央はニコリと笑顔を返した。